人間は、情報の約80%を「視覚」に頼って生きています。
これは逆に言えば、脳の処理能力の8割が、目からの映像処理に奪われているということです。

では、その最大の情報の入り口を強制的にシャットダウンしたらどうなるでしょうか?
余った膨大な脳の処理エリアは、行き場を失い、即座に「聴覚」や「触覚」など別の情報の処理へ割り当てられます。

今回は、目隠しによって引き起こされる「短期的な脳の可塑性(かそせい)と、恐怖と快楽の危険な変換メカニズムについて解説します。

目をふさぐと、他の感覚が過敏になる!?

「目は口ほどに物を言う」と言いますが、脳科学的には目は「他の感覚を黙らせる」独裁者です。

目隠しをして視界を奪うと、通常は映像を処理している脳の後頭葉(視覚野)が、活動を停止する……わけではありません。
驚くべきことに、視覚野は「触覚」や「聴覚」の処理を手伝うために、即座に再利用され始めます。

これを「クロスモーダル可塑性」と呼びます。

スーパーコンピュータ並みの処理能力が「肌の感覚」だけに注ぎ込まれるため、普段なら気にも留めない衣擦れや、指先のわずかなタッチでも「普段より密度の濃い情報」として脳に飛び込んでくるのです。

「予測不能」になるとドーパミンが出る

視覚がある状態では、私たちは常に未来を予測しています。
「あ、彼の手が近づいてきた。あと1秒で肩に触れるな」 脳はこの予測に基づき、実際に触れられる前に準備を整えてしまい予測による感覚の減衰が発生します。

しかし、目隠しをされると、この予測システムが崩壊します。

これらが全く計算できません。
予測不可能な状態で触れられた瞬間、脳内では「報酬予測誤差」が発生します。

「予想外の刺激が来た!」 この驚きに対し、脳は学習のために大量のドーパミン(快楽物質)を放出します。 目隠し中のタッチが異常に気持ちいいのは、全ての刺激が「サプライズ」として処理されるからです。

恐怖が快楽へ変わる瞬間

真っ暗闇の中に置かれると、人間の脳(扁桃体)は本能的に「恐怖」を感じ、警報を鳴らします。
心拍数が上がり、呼吸が浅くなり、アドレナリンが分泌されます。
いわゆる「興奮」の状態です。

ここで重要なのが、脳の「興奮の誤帰属」というバグです。

生理学的に見ると、「恐怖によるドキドキ」と「性的興奮によるドキドキ」の身体反応は、ほぼ同じです。
パートナーへの信頼(安全な環境)がある状態で目隠しをされると、脳はこの「恐怖のドキドキ」のラベルを貼り替え、「これは性的興奮だ」と解釈を変更します。

不安であればあるほど、アドレナリンが興奮の燃料となり、感度を底上げしてしまうのです。

まとめ

今夜は、市販のアイマスクでも、ネクタイ、もしくは家にあるタオルなんかでも構いません。
視覚を遮断して生まれた80%の余りを、「指先」や「耳」の感覚にベットしてみてみるのも良いかもしれません。

現代のセックスは、視覚的になりすぎています。
電気を明るくし、鏡を見たり、スマホで撮影したり。
それは「情報」としてはリッチですが、「感覚」としては貧困ではないでしょうか。

目隠しで報酬予測誤差を操り、パートナーへスパイスを与えてみてはいかがでしょうか?

それでは。